有安杏果の卒業~2011年のももいろクローバーZから四つ葉のクローバーへ

2018.01.21  本・映画・音楽の感想

ももいろクローバーZ

2011年。

一流と呼ばれた企業の経営陣の無能さや、政治家の不誠実さがテレビ画面を埋め尽くし、マスコミもこれまでの仕事のやり方で対処できない事態に、まったく機能していないように見えた。

世界がどこへ向かっているのか誰にも分からなかった。

これまでの何かが間違っていて、あるいは間違っているのを知りながら惰性で進めてきた物事に懐疑の目を向け、一歩も動けないでいた。
終戦直後よりも、希望を持つことができない。そんな時期だった。

僕は初めて「ももいろクローバーZ」を見た。

過分に脚色され、自らファンタジーを自負しているとはいえ、彼女たちの輝きが不安を抱える多くの人に希望を与えたのは事実だ。

行き詰まった世界を笑顔で照らし、灰色の現実を色あざやかな舞台に変えた。

メンバー本人たちの自覚がないまま、そして、観客も何に感動しているのか分からないまま、心を大きく揺さぶられ、多くの人間の人生が変わっていった。


時代が一番必要としていた場所に彼女たちは突然登場したのだ。
戦場カメラマンの渡部陽一さんが言うとおり「世界がももクロを求めて」いた。

今振り返ってみれば、それを可能にしたのは運ではなく、「芸能」の力と呼ぶべきものだったのかもしれない。

普通の女の子のように振る舞い、親しみやすいキャラクターを演じながらも、5人は芸能の申し子ともいうべき存在だった。

今回卒業した有安杏果は、歌舞伎の初舞台を踏む幼児よりも早い時期からカメラの前で演じ続けている。

他のメンバーも小学生から芸能活動を続け、レッスンに励んでいる。

天真爛漫に見え、素人の女の子のように見えたとしても、常に人に見られることを宿命づけられた人間だ。
早見あかりが脱退した時も、テレビカメラの前で涙を流している姿を記録され、その後何年にもわたって再生される。

そうやって生活の大部分を被写体として生きる人間の気持ちを誰が理解できるのだろうか?

マネージャー、演出、音楽プロデューサー、その誰もが思春期に「普通の」生活を送ってきた人たちだ。

彼女たちの本当の気持ちを理解できる人は、お互いのメンバーだけなのかもしれない。
だから有安杏果が卒業する気持ちを、一番理解できるのもメンバー以外はいないのだ。


そもそも彼女たちの人気が、他の芸能人と異なる主な要因はどこにあるのだろうか?

早見あかりの脱退に際してメンバーが出演したust動画「かなことペヤ 2011/4/6」の中で、百田夏菜子が早見に水を渡す何気ないやりとりを見た時、僕は女優の田中好子さんを連想したのを覚えている。なぜ連想したのかはわからない。

元キャンディーズの田中好子さんは、同じ2011年4月に亡くなるまでの約20年間にわたり、がんと闘病していることを隠し仕事を続けていた。
病室でも痛みに耐え、来客には笑顔で応えていたという。

当時、動画を見た時に、若さと無邪気さの中にも、凛として存在する、思いやりのある「節度」のようなものを感じ、田中さんを連想したのかもしれない。

のちに、腰を痛めていることを顔に出さずに、怪盗少女でえび反りジャンプを飛び続けるももクロのリーダー百田夏菜子の姿がすでにそこにはあった。

痛みを口から出さなければ、世界から少しだけ苦しみが消えるのではないか。
目の前の人間に笑顔を届ければ、世界は少しだけ明るくなるのではないか。
そんな想いが無意識に人格として備わっているような気がした。

しかも普通はそのような振る舞いが人に与える印象は、敬虔さや神聖さなのだが、5人は躍動感に満ちていて楽しそうに見えた。

その明るくておしゃべりな聖職者ともいうべき奇跡的な人柄こそが「ももいろクローバーZ」の魅力の一つだったのだろう。

それは生まれもった人柄というよりは、幼い頃から芸能に身を捧げることで、大人社会の中で身につけた一種の芸なのかもしれない。世界が求めていることに、一生懸命応えようとすることを自分でも止めることができないのだ。



今回、有安杏果がキャンディーズ解散時のセリフと同じ「普通の女の子に戻りたい」という言葉を残したが、そうした「節度」をもって、ファンの期待に応え続けることに疲れてしまったのかもしれない。そして、2011年のももいろクローバーZを決して忘れることのないファンを、いつか裏切ってしまうのが怖かったのではないか。

自分の本音を通して人間らしく生きようとすれば、どこかでファンの求める「節度」を完全に脱ぎ捨てることになるからだ。誰よりもファン想いの有安が、ファンの幻想を守ることも1つの理由として、卒業を選んだのかもしれない。



楽曲の高音域や難しいパートを担ってきた有安杏果が今日卒業することで、ももいろクローバーZは大きな苦境に立たされることになったのは事実だ。

卒業をメンバーに告げた時に、百田夏菜子が沈黙したという90分の間に「解散」という2文字がなかったとは言えない。

だが僕は、方向性を間違わなければ、4人はさらに大きく飛躍するだろうと思っている。

もともとミュージシャンとしての実力よりも、前述したように、人柄の魅力のほうが大きいからだ。

寸劇をやってもコントをやっても、トークショーをやっても人は集まるだろうし、むしろ芸能の道を貫くことこそが、彼女たちの才能を開花させることにつながると期待している。
ドリフターズでもなく、スマップでもなく、ももいろクローバーZという新しいフォーマットを作り上げてくれると確信している。

そして大きな役目を終えた奇跡の5人としての活動は、消費されるだけのブームとしてではなく、観客1人1人の心に残り、それぞれの人間性の一部として、これからも社会を支えていくだろう。

2011年の輝きが早見あかりによってもたらされたように、四つ葉のクローバーとなった「ももいろクローバーZ」は、もう一度輝くチャンスを有安杏果によって与えられたのだ。


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